ソニー6%急落から見えるもの

ソニー(6758)が4月27日、2017年度の連結決算と2018年度の業績見通しを発表しました。第4Qが昨年同期比大幅減益に加えて、2018年度見通しが市場の期待(営業増益)に対し営業減益だったことが逆サプライズとなり、株価は6.1%の急落となりました。

日本を代表するITベンダー企業ソニー。市場期待と発表内容の乖離分6.1%という数字から何が見えてくるのか・・・検証してみたいと思います。

 


ソニー6%急落から見えるもの

 

目次

  1. 23日時点のQUICKコンセンサスに見る市場期待
  2. 27日会社発表
  3. 一株純利益の観点で着目するとポジティブサプライズ
  4. ここから見えてくるもの
  5. まとめ

 

1. 23日時点のQUICKコンセンサスに見る市場期待

QuickMoneyWorldの、ソニー決算「今期は減益」の予想も 試される画像センサー、PS4の底力は4月25日付けの記事であり決算発表直前の市場期待と23日時点のコンセンサス数字が出ています。

この記事を要約すると、

  • 2018年度営業利益は7000億円を下回りそう
  • ゲーム:6年目のPS4に懸念
  • 音楽:「Fate/Grand Order」がヒットした反動が出そう
  • 半導体:営業増益を維持

と2018年度は減益予想でありながらも記事の締めくくりは(以下引用)

株式市場では、リカーリングが軌道に乗れば3年後のソニーの営業利益は1兆円に達するとの予想もある。今月就任した吉田憲一郎・社長兼最高経営責任者(CEO)のもと、リカーリング事業でどの程度成果を上げられるか、市場の期待値は高まっている。

(以上引用)として2020年度・営業利益1兆円予想まで紹介し、先々への市場期待の高さを伝えています。

 

2. 27日の会社発表

市場期待高まる中、ソニー(6758)が4月27日、2017年度の連結業績と2018年度の業績見通しを発表しました。

<連結業績(米国会計基準)>
,         前年度実績  2017年度実績  2018年度見通し
売上高    7兆6033億円  8兆5440億円  8兆3000億円
営業利益     2887億円    7349億円    6700億円
純利益        733億円    4908億円    4800億円

 

  • 2017年度通期はほぼ市場予想通りだったが第4Qが昨年同期比大幅減益。
  • 2018年度の見通しについては対市場予想で売上高(▲4000億円)、営業利益(▲700億円)と大幅な減収減益の会社見通し。

発表後の翌営業日となる5月1日の株式市場はこの2点に大きく反応し、株価は6.1%の急落となりました。

 

3. 一株純利益の観点で着目するとポジティブサプライズ

市場予想と会社発表を一株利益及び株価に換算してみます。数字の上では2017年度実績は市場予想値とほとんど乖離はありません。したがって数値化できるのは2018年度・見通し分のみです。

2018年度の市場予想と会社見通しを一株純利益と株価に換算してみます。

市場予想:純利益=4706億円 → 一株純利益=371.89円

会社見通し:純利益=4800億円 → 一株純利益=379.32円

ここで決算発表直前の株価終値5400円/一株純利益=371.89円が市場コンセンサスだったとすると発表後の株価は5507円となります。

一株純利益の観点で着目するとポジティブサプライズであり株価はむしろ107円(1.9%)上げるべきだった事になります。

4.  ここから見えてくるもの

一株純利益の観点では1.9%上げるはずが実際は6.1%下がったわけですから8%下げる要因が他にあったはずです。

当然、会社側の減収減益予想が市場コンセンサスよりも大幅に悪かった事は言うまでもありません。売上高と営業利益は本業の状態を示す最重要指標です。

もし営業利益▲700億円がそのまま純利益にスライドしたならば株価換算で▲699円(▲12.9%)の破壊力です。まあそのままスライドすることはあまりないとは思いますが。

で実際の市場は上記の極端なシュミレーションを話半分程度で受け止めたということが数字からおよそ見えてきます。12.9%X0.5=6.45%>8%

もうひとつの要因とされている2017年度第4Qの大幅減益ですが、これは2017年度通年の市場コンセンサスから予想されていた事なので理論的にはショックを受けるニュースではないはずです。

ですが、未来の減収減益のインパクトがとても大きかったので「足元の数字も予想通りであってもやっぱり悪かった」事に市場はがっかりしたということでしょう。これが残りの1.55%分というところでしょうか。

 

5. まとめ

記事中の細かい予測数字それ自体にはあまり意味はありませんが、大枠として今検証によって見えてきたこと。市場は今回のソニー2018年度業績見通しから、将来の一株利益の減少を危惧し「最大リスク時の約50%分までを株価に織り込んできた」とみていいのではないでしょうか。