退職まで残り数日の出勤日を残すのみとなった先日、お昼休みに会社の近所のスーパーにて見つけたちょっといい話
その時私は「ああ、こうしてお昼にお弁当買いにいくのもあと7回のみになったかぁ」等とちょっとおセンチな感情の中、会社の近所のスーパーにてお弁当を買っていました。
都心のスーパーというのはお昼休みの時間帯になるとサラリーマンOLがどっとお弁当を買いにいくものでそこのスーパーもレジからはるか遠方すでに90度曲がった先まで人が並んでいましたが慣れっこいつもの事。
最後尾に並んだ私はお弁当と飲み物を落とさない様に注意しながらスマホをいじり始めました。「お弁当、持ってきたエコバックに一旦入れてしまいたいけど違反だよなぁそりゃ流石に」等とチラリと思ったりしつつ。
数人分列がすすんだところでそれは起こりました。
「ベチャっ」 前のほうからイヤな音がします!
なんと音の正体はスパゲッティのお弁当でした、しかもフタが取れてしまって中身がモロに床にベッチャリと。これはもう流石に食べられないのは明らかでした。
落としたのは私の前の前に並んでいた20代後半ぐらいの青年でした。その後ろに並んでいるのは同僚らしく同じくらいの年齢でしょうか。
落とした青年は何も言わずにプラスティックのフタを使ってべっちゃりと落ちたスパゲッティを速やかに器にすくい上げ始めました。
同僚の方はそれをまだ食べるつもりですくい集めてるのかと思ったらしく「流石にそれは・・・」と言いました。その時私も同僚の人と同じように思ったものです。(まさか食べる気?)
ほぼきれいに床から器にすくい上げた後。青年は同僚になにか一言いいましたが残念ながら私には聞こえませんでした。
そしてなんと青年はすくい上げたとは言え変形してフタを器にはめる事もできなくなり、なにより器からスパゲテッィがはみ出してたれさっがてる、かつてはお弁当だった何かを持ったままレジの列に平然と並び続けたのです。
同僚に何と言ったのかが聞こえなかった私はすでにその青年に意識集中状態です。一体どうするつもりなんだろうか。驚くべき事に同僚も全然緊急事態が発生した風もなく二人は何も起きなかったかの様な平然とした様子でたわいもない日常的会話をしながら並んでいるのです。
私の頭の中ではいろんなことがぐるぐると駆け巡ります。
列はまだレジにはかなり遠いしここで替わりを取りに行かないのは何故だ、店員さんを呼んで助けを求める事もしないのか、このままレジに並んでいったんレジについてからまた買い直すのか。
しかしそんな私の注目などにも全く気が付く事もないほど平然としたままもうすぐレジというところまで来ます。ここで同僚が私にとっては重大なヒントになる一言を青年に言ってくれます。
「俺が柿の種ぐらいは奢ってやるよ」そういってすぐ脇に吊るされていた100円の柿の種を取ったのです。
そうか二人とも持ち合わせのお金はギリギリしか無かったのか。
しかしそれでもレジに付いてからどうするのかは分らないし、いよいよ青年のレジの順番が来ます。
もはやお弁当ではなくなった何かをレジの店員さんもすぐに気が付き一瞬ギョっとした目をします。
青年「通路のカドを曲がった先で落としてしまいました。すみませんが床を汚してしまったので拭いておいて下さい。それとこれはお支払いはしますのですみませんが処分して下さい」
そうか、最初から既に自分で答えを出していたんだ、誰にも迷惑をかけないで甘えないで全て自己責任とする答えを、だからあんなに平然としていたのか、そして床も汚したとは言えほぼ全ての中身は自分ですくい上げて既に列のじゃまになるほどでもないほどリカバリーさせているのだ。
正直その解答は私には想定できなかった程に立派なものでした。私は少しばかりの感動をしていました。なによりも青年が最初に店員さんに言ったのが床を汚した場所を拭いてほしい旨だった事が。
今度は店員さんの感動サプライズが出ないだろうかと期待して見ていると、大変残念な事に私のレジの順番が回ってきてしまいました。青年のレジを追い越してかなり先のレジに進まなければならないのです。
残念ながらその後の青年と店員さんのやりとりを見届ける事はできませんでした。
最後に店の出口手前の電子レンジで温めをしていた私の横を、やはりお弁当は無くなり落とさなかった野菜サラダパックだけをもって青年が私の横を通り過ぎ店から出ていくのを見ました。
ああ店からのサプライズは無かったか青年が断ったかだったんだな、どんなやりとりだったんだろう。
何かとても切なくもあり清らかでもある何とも言えない風が吹き流れます。
どうかあの野菜パックが栄養満点で好青年の胃袋を何とか持たせてやってくれよ。
せめてもの祈りを込めて青年と手にする野菜サラダパックを見送ったのでした。
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