投資失敗 人はなぜ株で損するのか 

この記事で教科書的な事を書くつもりはさらさらありません。筆者自身が大損をした経験から学んだ、市場や株に潜む「弱き者は必ず負けるメカニズム」とその対処方法を乾坤一擲ここに記します。最悪の一手を打つ前に読んで頂ける事を切に願います。(当記事は6700文字、全て読むのに14分です。)


投資失敗 人はなぜ株で損するのか

1 はじめに

「もう怖いしいいよ!ここで売らなきゃまだまだ下がるし!」・・思い詰めて売ったらそこが直近の底値であった。

「これは今直ぐ買わないと!絶対騰がるって言ってるし!」・・持たざるリスクを感じ高揚した気分で買ったらそこは天井であった。

「少し騰がったからこの辺で売っておこう」売った株に限ってその後もぐんぐん騰がって行く。

既に個別銘柄を売買している人ならば、一度はこんな経験をしていることでしょう。まるで自分のことをずっとマークして見ていたかの様な市場の値動き。ましてや何の武器も持たずして市場参加したならば間違いなく受ける洗礼。

「こんなはずじゃなかったのに」 気がついたら塩漬け株だらけ。

「ナンピン買いで更に深みにはまってしまった」

何故こうなってしまうのか。

この記事ではそんな市場のメカニズムを紐ときながら、「なぜ多くの人が株式投資で失敗してしまうのか」 探って行きます。

2 市場の過剰反応に巻き込まれ

好材料にしろ悪材料にしろ市場の反応は気まぐれです。それでも大きく下の3つにパターン化することができそうです。

  1. 好/悪材料の本当の威力なりに反応
  2. 好/悪材料の本当の威力以上に過剰に反応
  3. 好/悪材料の本当の威力を無視しほぼ反応無し

初心者泣かせなのが2の「市場が好/悪材料の本当の威力以上に過剰に反応」 した場合です。この場合、下手をすれば長いヒゲを形成して当日のうちに過剰反応分を帳消しにしてしまいます。寄り付き天井や底となる場合もあります。また当日は保ったとしても大概の過剰反応分は翌日には帳消しにされてしまいます。しかもこのケースはかなり頻繁に起こるのです。

これは市場が価格発見機能を発揮する過程でどうしても必要とする「試し」です。いわゆる「上値(下値)を見に行く」、「高寄り」、「安寄り」というよく聞くヤツがこれ。

この「市場の試し」に巻き込まれない為には・・好/悪材料の威力を「市場に訊いてみる」という受身の態度ではダメです。自分独自で初めからその威力の程を解かり切っていなければなりません。「自分の得意な業種にしか手を出すな」・・が何故定番セオリーなのか、再確認させられます

初級~中級者クラスになると見誤りによるリスクに警戒です。具体的には本当に「市場は好/悪材料の本当の威力なりに反応」している状況なのに、「過剰反応である」と見誤った場合。長い期間に渡ってそのトレンドが続いてしまい、大打撃を受ける可能性があります。損切りルールを決めて確実に守る事の大事さが良く分かるシーンです。

3の「市場は好/悪材料の本当の威力を無視しほぼ反応無し」の市況であっても、あえて自分はしっかりと反応できる人は中~上級者クラスでしょう。無視されても何でもやがて好/悪材料が業績として目の前に現れた日には確実に株価に反映されるのです。しかもこのケースは大天井付近での悪材料及び大底付近での好材料によくでるパターンなので、その見識はことさらに高い価値を持ちます。

3  レーティングという名の誘導に導かれ

世に溢れる株情報。中でも証券会社の出す個別銘柄のレーティング情報は我々に直接的かつ具体的に訴えかけて来ます。その簡単さゆえに迷える投資家は飛び付きたくなるものです。

しかしこのレーティングは実際のところどれぐらい当たるのでしょうか。

逆にもし、このレーティングが当たりまくるのであれば目標株価到達前に売る(又は買う)人はいないはずです。つまりレーティングが出たら売買が成立しなくなり買い(又は売り)気配で目標株価まで行くはずなのです。

ですが実際にはそんな市場の反応は見たことがありません。せいぜい5%も動くのがやっとでしょう。

この実際の市場の反応こそがレーティングの信頼度を如実に表していると言っていいはずです。

ここからは筆者の感覚になりますが、レーティングが本当に当てになるのは「上昇相場の黎明期~初期上昇相場終了」の期間ぐらいだと思っています。この時期はどの株もまんべんなく騰がって行く傾向が強くどの水準が一息つくあたりなのか、という点でとても参考になるという訳です。

またこれも筆者の感覚ですがレーティングは総じて「買い」推奨側に寄っていると思います。証券会社にも付き合いがある以上「売り」推奨はかなり出しにくいだろう事は容易に想像できます。

レーティング情報を鵜呑みにするのはリスク大です。証券会社は責任をとってくれません。投資はあくまでも自己責任です。レーティングはあくまでも投資判断のひとつの材料として見るべきなのです。

4  「今回は違う」の決まり文句に背中を押され

「今回の相場はいままでとは違う」・・・この様な内容の記事を見たことがありませんか。これまでの経験則から、あるパターンが出現すると良くないことが起こる様な場合に必ず出てくるフレーズ。

代表的な例を挙げます。

イールドカーブ(長短金利差を折れ線グラフにしたもの)逆イールド(長期金利と短期金利が逆転すること)になると景気後退局面に入るサインであると言われています。(下図赤線グラフ)

これは経験則としては過去に何度も起きている確度の高いものです。

2008年のリーマンショックに先立つ2006年。イールドカーブがフラット化(長期金利と短期金利がイコールに近づく)してきた頃にこの「今回の相場はいままでとは違う」の記事が出ています。しかも専門家の書いた記事です。

結果はご存知の通り2007年末ごろから経験則通り見事に景気後退局面入りです。

この記事は探せば今でもインターネット上に公開されていますが、さすがにリンクを張るのは控えます。

因みに2018年においてもイールドカーブがフラット化してきており、やはりご多分に漏れず「今回の相場はいままでとは違う」を唱える専門家は少数という訳ではなくいるのです。これもインターネット上を探せばいくつか出てきます。

とかく人は都合の良い方の情報を信じようとするものです。しかもどのような局面にあっても都合の良い方の記事は存在するのです。

自分が求める結論を書いている記事を探して「ああ、やはり自分は間違っていなかったんだ」と納得してしまうのはとても危険なのです。

5  投資とトレードのはざまにはまり

中長期投資、スイングトレード、デイトレード。

中長期投資だけが「投資」、他は「トレード」と言われるゆえんは何なんでしょうか。

それは

中長期投資だけが含み損を許容する手法だからではないでしょうか。

まさに読んで字のごとく一旦資産を投げる訳です。ただしその裏では周到な配当益の計算や銘柄の将来性、成長性を見込んだ背景あってのものですが。

これに対してトレード勢は基本的に含み損を許容しません。お金と株とを交換しその後、株の価値が上がっても下がっても所定の期間内で再びお金と交換するのが基本です。

失敗したトレードは確実に損切りする必要がある訳です。

デイトレーダーはほぼ問題ないのでしょうが、スイングトレードでは損切りが徹底できない人も多いでしょう。

しかしスイングトレードで損切りを徹底できないとなると調子のいいときは良いですが、少し悪くなっただけでとたんに含み損を抱えた株だらけになりかねません。

もしそうなってしまってはスイングトレードというより中長期投資をしているかのような状態です。売れないので回転資金もなくなってしまいます。しかも保有する株は本来ほんの1週間程度で売るつもりだったものだらけ。買値の絶対水準など全く考慮することなく買った株なのです。

こうなってしまった時期が長期スパンでの上昇相場の半ばあたりまでであれば、救われる確率はかなり高いでしょう。問題は上昇相場の半ば過ぎ~末期になった場合です。買値はかなりの高値圏である可能性が高いでしょう。何よりも株価がすでに天井を打っている可能性が怖い。そして結果的に高値掴みになってしまっては莫大な後悔がのこるでしょう。まさに投資とトレードのはざまにはまりこんでしまった様なものです。

中長期投資においてもこのはざまは存在します。本来5年ももつつもりで買ったはずが、10%も騰がったところで「いったん売って少し安くなったら買い戻そう」などと欲をだす事があります。そんな時に限って売った後に急騰が入ったり押し目が来なかったりで2度と買い戻す気がおきない株価にまでなってしまったりします。

こうなってしまうと、残ったのはあまりパフォーマンスの優れない株だらけになりかねません。市場は良いものを持っている人には早く売るように誘惑してくるのです。中長期投資家はこんな誘惑には断じて乗ってはいけません。

6 ナンピンの誘惑に誘われ

持ち株が値下がりしてしまったらどうするか。選択肢は3つあります。

  1. そのまま放置
  2. 損切り
  3. ナンピン買い

ただし5章「投資とトレードのはざまにはまり」でも述べた様にトレード勢には損切り以外の選択肢はありません。「所定の金額まで下がったら損切り」、極めて単純明快に行動するのみ。スイングトレードとして買った株を急遽、中長期投資だったことにするのはいばらの道です。

つまり選択肢が3つあるのは中長期投資として買った株だけなのです。

中長期投資では上の3つの選択肢はどれもアリですが絶対やってはいけないパターンがあります。

それは、景気後退局面の下げ相場の途中でナンピン買いすること。当たり前の事なのですが多くの投資家がはまってしまう中長期投資最大のハマりポイントといっても過言ではないでしょう。原因は下げ相場の全容を見誤っていることなのは明白です。さらに遡れば買ったポイント自体も相場を読み違えていたからナンピンする羽目になったのです。

なぜここまで下手を打ってしまうのか。

買ったポイント自体、相場を読み違えている理由はほぼ、本記事の3章および4章に書いたロジックにはまってしまうからだと思います。それでは、なぜ「レーティング」や「今回の相場はいままでとは違う」に惑わされてしまうのか。

これはあまりにも強く「上昇相場継続の願望」を抱いてしまうことに原因があるのではないでしょうか。さらにその深層には「天井を打って下落相場入りすることに対する極端な恐れ」が根差しているのかもしれません。

しかしここを冷静に判断できないとハマるのは必然です。冷静に考えることさえできれば情報は溢れるほどにあるのです。冷静さを失わせる「恐れ」の気持ちさえ切り替えてしまえばいいのです。下落相場にも相応の中長期投資家としての対策はあるのです。

そもそも景気というものは循環するものです。景気後退局面は必ず一定周期でやってくるものであって決してこの世の終わりが来た訳ではないのです。

そんな「願望・恐れ」の気持ちを抱いたまま本当に下落相場に入ってしまったなら投資家の精神状態は最悪なはずです。来る日も来る日も下がり続ける相場を、いや一時的調整なんだと言い聞かせ続け日ごと膨らむ含み損を見続ける。とても冷静な判断ができる状態ではなくなってしまってもおかしくありません。

そしてついに最悪の一手 「下げ相場の途中でナンピン買い」・・

7 それでも明日を見るなら明日はある

ここまで、絶対やってはいけないパターンをいろいろと書いてきましたが、「すでに手遅れです、もうやってしまいました。」の方の為にご参考になるかどうかはわかりませんが、筆者がどん底にあった時に打った手を書いておきます。

1千万円以上の含み損を抱え、見るも無残な株価となってしまった持ち株たち。そしてこの先、上昇相場など永遠に来ないのではないかという雰囲気に満ちたセンチメント。こんなどん底の時でもさらに買い増ししたくなる株こそが、本当にホレ込んだ銘柄であることがはっきりと実感できました。その銘柄にありったけの投資につぎ込める資金を追加投入したのです。この時の気持ちはまさにこの銘柄と心中する気分です。

しかし幸いにも筆者のケースでは、その銘柄がやがて上昇相場に入ってから抜群のパフォーマンスを見せてくれたのです。

教科書の分散投資の原則からはかけ離れた一か八か的かつホレたのどうのと、はなはだひと様に勧められる方策ではなかったのですが、人間、最後のドタンバでは結局こんなものなのではないかとも思います。

とにもかくにも

それでも明日を見るなら明日はある。

これだけは絶対に忘れないで下さい。

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付録)初心者にとって大損リスクの高い投資スタイルとは

この章はこれから株を始める人向けです。他の人は飛ばして下さい。

投資スタイルにも千差万別ですが構成要素を下の3つに絞って考えてみます。

  1. 売買タイミング: (スキャルピング、デイトレード、スイングトレード、中長期投資)
  2. 資金の性格:   (余剰資金、期限付き資金、借金)
  3. 銘柄選定:  (自己、情報購入)

2の資金の性格だけはリスクの低い順なのが一目瞭然ですが、1と3はそう単純ではなさそうです。

1は初心者にとって敷居の高い順に見えるとは思いますが、実は大損リスクの観点では必ずしもそうでもありません。

中長期投資は買付時に最もエネルギーを必要とします。年単位での買のタイミングがほぼ全てと言っても過言ではありません。その会社の将来性はもとよりファンダメンタルズ、センチメント、金利や為替の動向等々チェックするべき項目が山ほどあります。どれだけチェックしても結局買いのタイミングは経験からくる相場勘に頼ることもあります。自分が株を始めようとしたところが10年来の天井圏かも知れません。また銘柄選定も自分で行えるぐらいにはその業界について知っていなければなりません。誰かから教わった銘柄ではこの先様々な材料が出てきた時に適切な判断を下し続けるのは難しいのです。

1~3週間程度のサイクルでトレードを繰り返すスイングトレードなら購入した情報通りにトレードするのもアリです。中長期投資に比べて相場全体の影響を受けにくいので、いつ株を始めたとしても大丈夫です。もしあなたが株を始めるタイミングがどうみても中長期的に見て高値圏であるなと思ったなら、スイングトレードがベストな選択になるでしょう。ただしスイングトレードにも大きなリスクが潜んでいます。売買回数がどうしても多くなる為に必然的に損切りしなければならない機会もたくさん訪れます。そのたびにあなたは当初決めたルール通りに損切りを確実に実行しなければいけません。ここで、もう少し粘って見ようなどと含み損を許容してしまうと、ポートフォリオはやがて含み損を抱えた株だらけ。回転資金は目減りしてまるで中長期投資をしている様な状態になってしまいます。でも保有している株は中長期投資しようと思って十分に吟味し尽くして買った株ではないのです。

秒単位の売買を繰り返すスキャルピングや1日のうちに売買を完結させるデイトレードは初心者にはいろいろと敷居が高いものです。平日の日中ずっとパソコンとにらめっこしている時間が取れること。信用口座を開設していること。常に情報を探し続けられること。これらを全て満たす必要があります。ただし始めることができたならルールは明白ですし資金回転はスイングトレードや中長期投資に比べて圧倒的なので直ぐに成果を出しやすい。何より含み損を抱えるリスクがゼロなのは魅力的です。ただし欲を出しすぎて自己資金の3倍まで信用取引をするとリスクは全投資スタイルの中でも最大になってしまいます。あくまでも小銭をコツコツと積み重ねていく手法だと割り切りましょう。

この章のまとめ

  • スキャルピング、デイトレードで信用取引3倍を使うのは最も危険
  • 中長期投資に安易に手を出すのはリスク大。年単位で投資タイミングを待つスキルが重要
  • スイングトレードは最も初心者に向いているも、損切りは確実に実行すべし

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